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オンボロバスにのって

砂漠のど真ん中できらびやかに辺りを照らすカクテル光線。まっすぐに伸びる395号線を走ると、突如野球場が見えてきます。

イチロー選手でおなじみのシアトル・マリナーズと提携している、シングルA(下注参照)のマイナーリーグ球団、ハイデザート・マヴェリックスの本拠地です。

ハイデザートは、ロサンゼルス北にあるモハビ砂漠の一角を形成する地域。ビクタービルやバーストーといった小さな街から成り、人口は50万人程度。マヴェリックスは、そこにある唯一のプロスポーツチームです。

ハイデザートは都市部のように娯楽が豊富なわけではありません。だから地元の人々にとっては、マヴェリックスの存在は数少ない楽しみの一つです。

アメリカでは、メジャーリーグ以外にも、下部リーグが全米各地に広がり、小さな街にも地元の誇りとなるようなプロ球団が存在しています。ボクが以前住んでいたテネシー州ノックスビルにも、テネシー・スモーキーズというマイナーリーグ球団がありました。こうしたプロ組織の裾野の広さが野球を文化にまで高めているといえます。

ボクが初めてマヴェリックスの試合を取材した金曜日の夜、球団は地元の少年・少女野球チームを招待していました。子供たちの家族も来ていたので、4,000人収容のスタンドは満員とはいかないまでも、普段以上の盛り上がりを見せていました。

試合前や各イニングの合間には、観客席を盛り上げるイベントが行われます。小学生達による国家斉唱、マスコットと子供のベース一周競走、大リーグに関するクイズ等々。試合自体に興味のない大人も、ピッチャーが三者三振をとれば売店のビールが一ドルになるからと、必死になってマヴェリックスを応援していました。観客にとっては単なる野球の試合ではなく、お祭りに来ている感覚なのです。

mavs6.jpg


でもそんなのんきに楽しむファンとはうって変わって、選手にとってのマイナーリーグは、メジャーリーグにあがる大切な競争の場です。日本とは違い、高校生や大学生が卒業後、すぐにメジャーリーグのレギュラーとして活躍するようなことはほとんどありません。どんなスター選手であっても、マイナーリーグで経験を積み、結果を残してからメジャーに昇格していきます。

しかしマイナーリーグの待遇は、平均年俸が数億円というメジャーリーグとは比べ物にならないほど粗末なものです。メジャーでは当たり前のチャーター機など夢のまた夢で、移動はオンボロのバス。給料も普通の会社員より低く、ドラフト上位で指名されてある程度の契約金をもらっている選手以外は、オフシーズンにアルバイトをしてお金を稼がなくてはなりません。

試合後、ボクは選手にインタビューをしにいきました。ロッカールームにはどうやって行けばいいかとスタッフに聞くと、彼は観客達の通行するコンコースにあるドアを指さしました。

おそらくそこから通路を通ってロッカールームまで降りていくのだろうと予想していたボクは、ドアを開けて真っ裸の選手達が所狭しと座っていたので一瞬びっくりしてしまいました。ファン達が絶え間なく行き来する通路から、わずか壁一枚を隔てて選手達のロッカールームがある。メジャーリーグの球場ではとても考えられないことです。

マイナーなんて通過点に過ぎないと考えている有望な若手、メジャーにいけないのは自覚しているけど少しでも長く野球をやっていたいベテラン、貧困から抜け出すためメジャー昇格を目指しアメリカにやってきたラテン系の選手。マイナーリーグには様々なバックグラウンドや思いを持った選手が集まっています。

取材を受けることなどめったにないため、インタビューで照れてしまう選手もたくさんいます。それを見て周りに座っている仲間達がはやし立てることも。

たとえ同じプロであるとはいえ、マイナーの選手にとってメジャーリーグは、普段テレビでしか見ることのない遠い世界の話なのです。そんなメジャーの舞台に上がる日を夢見て、彼らは今日もオンボロバスで旅を続けます。その終着点は誰にも分かりません。

たとえドラフトの上位で指名された有望株の若手であっても、この先何があるかは分からない。才能や実力だけで活躍できるほど甘い世界ではないのです。

マイナーリーグを通過していくことで、多くの選手達はきっとある一つの事実を学んでいくのです。ベースボールの神様は気まぐれなのだということを。

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(注)シングルAは日本でいうところの4軍にあたります。
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theme : MLB
genre : スポーツ

tag : マイナーリーグ メジャーリーグ ハイデザート モハビ砂漠 マヴェリックス スモーキーズ テネシー

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Author:TomoyaS
アメリカ生まれ、日本育ち。日本で大学を卒業した後、アメリカの大学院でスポーツ学の修士課程を修了。現在はカリフォルニアの新聞社でスポーツライターとして活動中。

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