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賞金500ドルのレース

ビクタービルのカウンティフェア特設会場には、二つの常設レーストラックがあり、一年を通じて車やオートバイのレースが行われています。

ボクもこの間、取材でレースを観戦してきました。

今回は、土の敷かれた一周100メートルくらいの短いトラックで行われる、オートバイと小さな車のレースです。トラックは木の柵に囲まれ、スタンドも手作りの雰囲気が漂う木製。

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メインイベントは、ブレーキのついていないバイクで土のトラックを数周するSpeedwayというレースで、イギリスでは一万人以上の観客を集める人気スポーツのようですが、アメリカではまだまだ認知度は低いです。

それでもその迫力は折り紙付き。柵と観客の距離はわずか数メートル。レーサーがカーブを曲がるたびに、客席には土しぶきが飛び散ります。転倒や衝突で、バイクが薄い柵に激突したのにはひやりとさせられました。けたたましいエンジン音は、隣の人の声すらかき消します。

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ティム・ゴメス選手は一周目でクラッシュのアクシデントに見舞われる

お世辞にも上手とは言えない実況が流れる中、観客はレースの勝敗よりも、ロックコンサートに行くような感覚で会場全体の雰囲気を楽しんでいるようでした。

レーサーは、Goatee(ヤギのヒゲに似ていることから)と呼ばれるヒゲを生やし、巨体を揺らせながら歩くいかにもというマッチョな中年男性から、7、8歳の女の子まで様々です。彼らは数百人の地元ファンでいっぱいのスタンドに出向いて、積極的に交流を図ります。まだまだマイナーな競技なので、スポーツ全体が家族のような雰囲気です。

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子供部門に出場する男の子がスタンバイ

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まだ小学生の女の子がレースに臨む

今回はティム・ゴメスという地元出身の若手選手に焦点を当てて記事を書きました。

現在19歳のティムは、ビクタービルの隣にあるヒスペリアという街で生まれ育ち、8歳のころからこのトラックでSpeedwayの練習に打ち込んできました。

ところが、80年代に盛り上がりを見せたSpeedwayは、90年代半ばになって陰りを見せ、ビクタービルのトラックは一時閉鎖されてしまいました。それでもティムは、2時間ほどかけてロス近郊にあるレース場に通い、Speedwayを続けました。

中学生の頃から才能を見込まれていた彼は、毎年AMA(アメリカモーターサイクリスト協会)からイギリスに派遣され、本場でのレース経験を積んできています。そのかいもあり、先月コスタ・メサというアメリカSpeedwayのメッカで行われた大きな大会で優勝を果たしました。

近年ではティムのような若手選手が台頭してきたことで、カリフォルニアでのSpeedwayは人気を回復してきています。ビクタービルでのレースも2年前に再開されました。

それでもビクタービルを入れて南カリフォルニア全体に五つのレース場しかなく、優勝賞金も微々たるものです。今回のレースは優勝賞金500ドル。日本円にすると5万円。エントリー費やガソリン代などのレースに参加する費用さえも賄えません。プロレーサーといえど、それだけで生活していくのは困難なのです。

ティムも今でこそスポンサーの援助を受けられるようになりましたが、高校時代からアルバイトをして生活費を稼いでいます。家具屋の正社員だったのですが、レース中に肩甲骨を骨折してクビになってしまい、現在ではフリーターです。それでも彼はSpeedway中心の生活をやめません。

他のマイナースポーツでもそうですが、フットボール、バスケットボールや野球といったメジャースポーツと違い、Speedwayには大学奨学金や数億円の契約金につながる将来は存在しません。敷かれたレールはないのです。先の見えない未来に、自分で道を切り開いていかなくてはならない。

ティムは地元の公立高校に通っていたのですが、もっと時間が自由になるということで、落第生を集めて教育を行っている高校へ転校しました。結局そこも中退して、高校は卒業しないで今に至ります。そんな彼の夢はイギリスに移住して、プロレーサーとして活躍することだといいます。

ボクはこうしたニッチなスポーツにこそ、本当の人間ドラマがあるのではないかといつも感じています。安定した日常生活や未来を犠牲にし、自分の好きなことに没頭し生きる姿勢はなかなか真似することはできません。しかもモータースポーツには命の危険すらともないます。地位や名声も得られない。それでも彼らはレースにとりつかれるのです。

「Speedwayはすごく過酷なスポーツだよ。クラッシュは当たり前だし、競争も激しい。でも、そこに参加する人たちはみんな家族のように仲がいいんだ。レース後にはみんな握手やハグをして、バーベキューを楽しむ。言葉で説明するのは難しいけど、とにかく楽しくてしょうがないスポーツなんだ。」とティムは言います。

まさにFor love of the gameではないでしょうか。

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親子で出場の男の子

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tag : アメリカ カリフォルニア スピードウェイ Speedway ゴメス ビクタービル バイク レース

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TomoyaS

Author:TomoyaS
アメリカ生まれ、日本育ち。日本で大学を卒業した後、アメリカの大学院でスポーツ学の修士課程を修了。現在はカリフォルニアの新聞社でスポーツライターとして活動中。

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