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ガンバリスト

ルーゲーリッグ病。正式名称を筋萎縮性側索硬化症。

重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。きわめて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する。有効な治療法は確立されていない。(Wikipedia より抜粋)



ベーブ・ルースとともにニューヨーク・ヤンキースの黄金時代を築いたメジャーリーガーの命を奪ったことで、この名前が付けられました。手足や首、顔など体中の筋肉が徐々に動かなくなるという不治の病です。




ハイデザートに住むステファニー・グリーンは15歳の女の子。8年前に始めた体操に夢中で、1週間に4-5回は近くのジムに通って練習をしています。そのかいもあって、全米や国際アマチュア大会にでても入賞するほどになりました。

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その日彼女はジュニア・オリンピックで発表する床種目の練習をしていました。他の両親達と同じように、ティム・グリーンとオードリー・グリーンは空調の効いた涼しいロビーから、ガラス越しに娘が新しい技に挑戦する姿を見守っています。

曲が終わるとステファニーはロビーに駆け込んできて、「パパ、今私のした技見てた?」とお父さんの耳元で尋ねました。

お父さんはうなずくのではなく、ただ眉を上に吊り上げます。それを見たステファニーは、大きな笑顔を浮かべ蒸し暑さの漂う練習場へと戻っていきました。そんな無邪気な娘の姿を、ティムは車いすに座りながらまっすぐな瞳で追い続けるのでした。

53歳のティムは、昨年の春ルーゲーリッグ病に冒されました。体を動かすのはもちろんのこと、言葉を話すこともできません。食事を満足に摂れないため、体は骨と皮だけというくらいにやせ細っています。家族とのコミュニケーションは唯一正常に動く眼球を使って行われます。

妻のオードリーは、発症時を振り返って言いました。

「最初は会話が不明瞭になったので脳卒中かと思いました。そしたら次第にすごい疲労を感じ始めたようです。ティムはある日私が外出中に電話をかけてきて、歩けなくなったというんです。前の年にヨーロッパ中をハイキングして回った彼には考えられないことでした。」

病気が進行し、11月には30年近く続けてきた英語の教師から障害退職。家族は彼の面倒を見るだけでなく、金銭的にも苦しい生活を強いられるようになりました。

しかし何よりも家族を苦しめたのが、目の前に迫る父親の死という恐怖でした。治療法の見つかっていないルーゲーリーッグ病。彼の命はもってもあと数年です。

「私たち家族にとって、とてもつらい変化でした。みんなでお祈りもしました。通っている教会は大きな支えになってくれました。そして決めたんです。惨めになる理由なんてない。むしろ私たちに惨めになっている時間なんてないんだと。家族で残された時間をできるだけ一緒に過ごして、楽しかった時間を思い出し、これからもそうした想い出を作っていかなくてはならないんです。

ルーゲーリッグ病の患者は脳は正常に働きます。だからティムは今でもユーモアにあふれています(インタビューの当日も、娘が新聞に載るということで、ビールを飲んでお祝いするんだと言って聞きませんでした)。コメディー映画を借りてきて家族みんなで見ることもしょっちゅうです。娘達の勉強を見ているのも彼なんですよ」とオードリー。

両親が教職免許を持つステファニーは学校に通わず、ティムが組んだカリキュラムをもとに在宅教育を受けています。ティムはステファニーの質問には眉を動かしてイエスかノーで答え、説明が必要なところはオードリーに聞きに行かせます。




そんなグリーン家を大きく支えているのが、ステファニーが所属するハイデザート・アクロブラッツです。アクロブラッツとは、曲芸師という意味のアクロバッツに、悪ガキたちという意味を持つブラッツをかけて名付けられました。

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地元の幼稚園児から高校生までが通うそのジムを運営するのが、ステファニーのコーチであるカレン。生徒達が体操を楽しむことを第一に考えるカレンは、笑顔とジョークを絶やしません。ステファニーの才能ではなく、その人生に対する姿勢にほれ込み、彼女の面倒を見続けてきました。ステファニーにとってはジムが第二の家族であり、カレンは第二のお母さんだといえます。

「ステファニーは強い精神と心を持っています。彼女は体操を愛しています。そしてそんな彼女がジムにいてくれることがみんな嬉しいんです。」とカレン。

ステファニーはジムの月謝を免除してもらうかわりに、コーチングのライセンスを取得し、小さな子供たち向けのレッスンを受け持っています。

グリーン家の状況を知ったアクロブラッツとその両親たちは、ステファニーがちゃんとした食事を摂れるようにと、交代で食べ物を持ち寄りました。また彼女が大会に出場できるよう、その旅費を捻出することもあります。ハワイで行われた国際大会のためには、メンバーたちがクッキーセールや洗車を行い、飛行機代に加えて現地で他の子供たちと同じように遊べるだけのお金を集めました。

地区大会で優勝したステファニーは、今月末デトロイトで開かれるジュニア・オリンピックへの出場権を手に入れていましたが、旅費を払うことができないため、一度は出場を諦めました。しかし別の全米大会で、膝のケガをおしての演技が審判たちの心を動かし、審査員からジュニア・オリンピックへの特別参加要請を受けたのです。

それがステファニーとカレンの気持ちを変え、大会までの3週間という限られた期間で何とか2人分の費用を調達しようと決意させました。2人は地元企業を訪ねて回り寄付を集めています。週末にはアクロブラッツ一丸となって、ガレージセールと洗車を行う予定です。




それでも残念ながら、ティムとオードリーはステファニーの晴れ舞台を見届けることはできません。

「お金の問題ももちろんあるけど、それよりまずティムにそんな長旅は無理です。私一人が付き添うだけでは飛行機に乗るのは難しいですし、キャンピングカーという手も考えましたが、あまりにお金がかかりすぎます。彼の障害を考えると選択肢はないんです。」

しかしステファニーは、家族のルーゲーリッグ病との闘いを通じて、そんな苦難をしっかりと受け入れ、力を発揮するだけの強さを身に付けました。

どこに行っても人目を集めるティムですが、ステファニーはそんなことお構いなしに大好きなお父さんの世話をします。食事を食べさせ、車椅子を押し、華奢な体でお父さんの体を持ち上げて車への乗り降りを手伝います。パートで働くお母さんが家にいない時は、食事を作ったり、すすんで家の掃除をするようになりました。

オードリーはようやく高校生になった娘の変化についてこう語りました。

「今やステファニーはあらゆるプレッシャーと向き合っています。以前は大会にでても緊張しているのが分かりました。でも今年はそれが変わりました。人生には競争よりも、もっとつらくて悩むべきことがあるんです。」

大会まであと1週間。ステファニーとグリーン家の奮闘は続きます。

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theme : 体操・新体操
genre : スポーツ

tag : ステファニー グリーン アメリカ ハイデザート 体操 アクロブラッツ ルーゲーリッグ病 筋萎縮性

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筋萎縮性側索硬化症のこと

筋萎縮性側索硬化症とはWikipediaより -- 筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、amyotrophic lateral sclerosis、ALS)とは、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患である。きわめて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺...

comment

Secre

素晴らしい家族、そして隣人たち。
ステファニーさんのご活躍を祈ります。

食事を持ちよったり、みんなでできることをして旅費を作る。特に子どもたちが洗車やクッキーセールをするというのは、とてもアメリカ的な風景ですね。私も地域の高校の体操チームが旅費を作るために、洗車をしていたのに遭遇したことがあります。
みんな子どもの頃からこういうことを身を持って学んで、自立心をつけていくんですね。

心に響く記事だね。
ともやの文章は、すーっと頭に入ってくる。
読みやすい。
そして、3枚目の写真、とてもいいね。
おつかれー:)

>エルルさん
体操のようなマイナースポーツは、スポンサーはもちろんのこと、協会から補助金が出るケースも少ないのが現状です。自分の好きなことをするために自分でちゃんとお金を稼ぐ。これは自立心を養うために必要なことですよね。

>ゆり
ほんと、俺の喜ぶ言葉が分かってるよな。そういうゆりがいてくれたから今の俺がある。いつも力をくれてありがとう!

写真きれい。私も一眼レフ欲しい。。

>愛
一眼は写真を撮ってて楽しくなる。Macちゃんに負けない魅力があるよ笑
プロフィール

TomoyaS

Author:TomoyaS
アメリカ生まれ、日本育ち。日本で大学を卒業した後、アメリカの大学院でスポーツ学の修士課程を修了。現在はカリフォルニアの新聞社でスポーツライターとして活動中。

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